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第25回日本消化器病学会大会は,山口大学の竹本忠良教授を会長に,10月13日から3日間にわたって山口市において開催された.今大会は,例年の消化器系3学会の合同秋期大会が分離独立した直後のものであったが,竹本会長陣頭指揮のもとに山口大学第1内科学教室の方々の御努力により,春の消化器病学会総会に勝るとも劣らぬ盛大な学会であった.筆者の担当した肝・胆・膵の領域の発表は,外人招聘講演1,特別講演3,シンポジウム7,一般演題355にも及び,とても全部を聞くことはできなかったので,特別講演とシンポジウムを中心に今大会の印象を記してみたい.
肝臓部門の発表は従来より本学会の中心をなすもので,今回も特別講演として“B型肝炎ウイルスキャリアをめぐる諸問題”(新潟大,市田文弘教授),“ビリルビン代謝”(岡山大,小坂淳夫名誉教授),シンポジウムとして“肝癌の前癌性病変”,“劇症肝炎の治療”,ポスターシンポジウムとして“脂肪肝をめぐる諸問題”などがあり,また一般演題も246題の多数に及んだ.特別講演の2題は,いずれも長年の研究の集大成とも言うべき見事な講演であり,会員に深い感銘を与えた.特に近年大きな社会問題になりつつあるHBVキャリアに対する予防対策(HBe抗原を指標とする)と感染防止対策(HBグロブリン,HBワクチン併用)が確立されつつある意義は大きいと思われる.シンポジウムのうち筆者が最も興味を持って聞いたのは,“劇症肝炎の治療”であったが,治療法の中心となっているのは,G-I療法,血漿交換療法,GO-80療法などで,これらの併用によって救命率はかなり向上してきている.しかしながら多くの報告では,救命率はまだ50%以下であり,今後消化管出血,脳浮腫などの合併症に対する対策の一層の検討と共に新しい療法の開発が望まれよう.なお,肝癌の前癌性病変の解明についてはまだ不完全であり,その診断も含めて今後の大きな課題となろう.また脂肪肝については,発生機序や病態はかなり明らかにされ,診断にはUS,CTが有効であることが証明された.
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