Japanese
English
今月の主題 早期大腸癌の病理診断の諸問題―小病変の診断を中心に
序説
早期大腸癌の病理診断の諸問題
Introduction
下田 忠和
1
Tadakazu Shimoda
1
1東京慈恵会医科大学病理
キーワード:
大腸早期癌
,
表面型大腸癌
,
組織診断基準
Keyword:
大腸早期癌
,
表面型大腸癌
,
組織診断基準
pp.631-632
発行日 1992年6月25日
Published Date 1992/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106886
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かつては大腸上皮性腫瘍の組織診断基準が話題になったり,あるいは病理医によりその診断が異なることは全くと言ってよいほどなかった.また大腸癌の発生も腺腫由来(adenoma-carcinoma sequence)で,全世界にほぼその考えが浸透していた.しかし最近になり大腸癌の発生は平坦な粘膜に発生する,すなわちSpratt and Ackermann(1962年)によって提唱されたde novo cancerの考えが中村,下田により改めて見直されるようになった.それはいずれも従来ではほとんど経験することのなかった5~10mm程度の小さい粘膜内癌,あるいは粘膜下浸潤癌の検討から導き出されたものである.その中で中村は,大腸上皮性腫瘍の診断基準を客観化するため,腫瘍腺管の組織形態計測を行い,構造異型と核異型をそれぞれ係数化して,新たな癌の診断基準を提唱した.
このとき以来,病理学的に癌と腺腫の診断基準が病理医によって異なるようになり,大きな議論を巻き起こしてきた.また時期をほぼ同じくして臨床的にも5mm前後の扁平隆起あるいは陥凹型の上皮性腫瘍が多数発見され,その中には粘膜下浸潤を来した癌も報告されてきた.更にこのような小さな陥凹性病変から進行癌に発育する可能性も指摘されている.したがって臨床的に小さい陥凹性大腸病変の発見が重要であるとの認識から,多くの陥凹性病変が発見されてきている.それに伴い,病理組織診断が病理医によって異なっている現実は臨床の場においても多くの混乱を与えてきた.
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