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書評「消化器外科病理学」
松野 正紀
1
1東北大学
pp.1334
発行日 1989年12月25日
Published Date 1989/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106632
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日常の診療に際し,臨床と病理との関連性は極めて深いものである.殊に外科領域における病理の立場は質的診断のみでなく,治療面でも手術術式の選択や手術後の様々な治療方針を決定するうえで重要な位置を占めている.本書の序文にも述べられているように,このような密接な関係にある外科と病理を結ぶ“外科病理学surgical pathology”としての成書は欧米では古くからAckermannやSilverbergらの著書があって,わが国でも今なお広く愛読されている.わが国においても,過去において幾つかの本が発刊されているが,外科医と病理学者との綿密な連絡に基づいて編集されたものは少なく,それぞれの部門のアトラス的内容のものが多かった.また,日常診療で最も多い消化器疾患のみを対象とした詳細な外科病理学の発刊はほとんどなかったといってよい.
本書を手にして,まず感ずることは,求めていたものがようやく現われたという感激に近い喜びである.消化器疾患の外科病理学書となると,豊富な臨床例の蓄積と臨床病理に目を向けた優れた病理学者の存在が不可欠であり,森岡,森両先生の監修によってはじめて成しえたものと思われる.とりわけ,東京大学第1外科には病理学に造詣の深い方々が多く,執筆陣に加わった外科医が臨床と病理の掛け橋となって,本書の内容に厚みを持たせている.
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