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林貴雄博士の「消化器内視鏡ハンドブック」は手引書,案内書あるいは取扱説明書などの言葉がぴったりくるような著書で,研修医や検査技師など内視鏡室で仕事をする人たちの参考書として大変役に立つばかりでなく,ベテランの内視鏡医にもいろいろ利用されてきたが,今度その第2版が出版された.初版から9年もたったためか,かなり思い切った改編が行われている.最も目につくのは初版が単色刷りだったものが黒と薄茶の2色刷りになったことで,かなり見やすいものになった.特に図が良くなっていて,内視鏡所見の絵などはリアル感すら出ていると思う.単色が2色になっただけでこうもわかりやすくなるのかと驚いた次第である.そしてこの9年の間に急速に発展を遂げた食道静脈瘤の硬化療法,電子内視鏡およびこれに関連した項目などが書き加えられた.またなぜか前回落ちていた小児や高齢者の内視鏡に関する項目も加えられている.そして初版と比較するといろいろ整理されて消化器内視鏡に必要な事項はすべて網羅され,また削られた部分もあって全体としてスッキリしたように感じられる.しかし項目があまりにも多いために,それぞれについては簡潔にしか説明されておらず,詳細にみれば物足りなさを感ずるが,基礎的なものとか実技に直結する問題,あるいは医師だけでなく看護婦や検査技師の初心者向けの事項については十分の紙面をとってわかりやすく説明されている.また他の成書では普通取り上げられないようなもの,たとえばスライドの作り方とかフィルムの整理の仕方,内視鏡室のレイアウトおよびAV機器の取り扱いとメインテナンスなど,内視鏡室におけるありとあらゆる事柄に気を配っている.したがって内視鏡に関することである限り,どんな問題でもこの本1冊あれば解決できるだろう.少なくとも解決の糸口はみつかるはずである.またこの本は巻末の付録に特徴があり,ここには内視鏡に必要なあらゆる分野の用語,内視鏡の学会誌に載せられた解剖学用語のほか,食道静脈瘤内視鏡所見記載基準,胃潰瘍の病期分類,胃癌取扱い規約および大腸癌取扱い規約などから内視鏡に必要な部分を広範囲にわたって抜粋し,掲載している.したがって原稿を書くとき,解剖学用語やいろいろな規約などを確認しようとする場含,わざわざ原文を探さなくても,この本の付録が大概のことを間に合わせてくれる.
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