--------------------
書評「消化器切除標本の取扱い方」
加藤 紘之
1
1北海道大学第2外科
pp.138
発行日 1994年2月26日
Published Date 1994/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105718
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
久しぶりに手応えのある,また味のある良書に巡り合えました.読み始めるととても楽しく,私も一気に最後まで読み終えてしまいました.二村教授が夜桜見物に出掛けて木の下で指差している枝が尾状葉胆管枝であり,これがわかるようになったら免許皆伝といったリラックスしたまえがきに始まり,“わかって下さい-総論です”では,7つの質問に答える形で標本整理の意義が述べられています.“特殊な機材がいるんでしょうね?”の問いには“機転を働かせて下さい.あちらこちらからいただいた老巧器材です”として,扉にもなった標本撮影台が手書き図で示されています.“あまりお見せしたくない舞台裏”としながらも,良い写真を撮る熱意があふれています.“スライドのマウントに書き込みを”,“絵のない手術記事は意味がないですよ”などは,実行できそうで実際にはしてないわれわれにとって“明日からはちゃんとやろう”と決意させます.
次の項目“おぼえてください―基本テクニックです”では,微に入り細に入り標本造影法から標本切開とスケッチ,更に写真撮影,リンパ節整理法,固定法まで述べられており本当に役立ちます.“化粧”とはうまいことを言うなあと感心したり,名札,ガラス棒,テフロン針,注射針を使うと標本が生きてくること,水浸写真が実像をよく表現すること,光の位置の重要なこと,リンパ節整理の具体的な方法など実用的で楽しく勉強できます.悪い出来上がりのスライドが“さらしもの”と称されるようですが,その鑑賞会を開いて全体のレベルアップにつなげているとのことです.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.