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今月の主題 胃良・悪性境界病変の生検診断と治療方針
主題
胃癌の病理組織診断基準の再検討は必要か
病理組織診断は今どのように:胃癌の組織診断困難症例の生検組織診断と手術標本組織診断の対応
Revision of Histopathologic Diagnostic Criteria of Gastric Carcinoma: Is It Necessary?―The Result of Histopathological Diagnoses of Benign/Malignant Borderline Lesions
中村 恭一
1
Kyoichi Nakamura
1
1東京医科歯科大学医学部第1病理
pp.205-228
発行日 1994年2月25日
Published Date 1994/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105688
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はじめに
胃癌の中には生検組織診断の難しい症例がある.例えば,X線・内視鏡的に進行癌ではあっても,その粘膜内進展部から採取された生検組織のみからは病理組織学的にどうしても良性病変としか診断しようのない症例とか,あるいは異型度からは良性悪性境界領域病変とされる症例である.同様に,手術標本の病理組織診断においても,早期癌か良性異型上皮巣(腺腫)かの診断が困難であるいわゆる良性悪性境界領域病変,そして早期癌か良性再生異型上皮かの診断が難しい症例がある.
以上のような病理組織診断の難しい症例は今,どのように考えられ,そしてどのように診断されているか? 診断困難症例の生検組織と手術組織標本の対応から問題点を浮き彫りにして,胃生検組織診断を行う場合の注意点,そして実際における対処の仕方などを学び取ろうとするのが本企画の目的である.そのようなことから,消化管病理学に精通している10人の病理医に組織診断をしていただき,それらの集計から“究極の”とも言うべき,いわば胃癌の病理組織診断学に潜在している問題点をむき出しにする.
10人の病理医とはTable 1の諸先生であり,多忙にもかかわらずこの企画に快く協力してくださった.集まった症例は53例,500~600枚にも及ぶ組織標本を実質半日で診断していただいた.標本全体の1/3の検鏡が終わるころからは思考が鈍り,以後の検鏡は経験に基づく直感による診断となりがちとなる,という実感ではあった.しかし,この直感による診断は重要であろう.それは過去に培われた知識と経験とが凝縮された反射経路によるものであるから.
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