--------------------
編集後記
神津 照雄
pp.1466
発行日 1995年10月25日
Published Date 1995/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105572
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
食道表在癌の発育進展に関して,貴重な症例を拝読させていただいた.症例を見る限り,ほとんどが0-Ⅱ型の症例の経過観察であったが,林論文の,粘膜癌から進行癌まで8年4か月間の経過を追えた症例は圧巻である.食道癌の発育進展を考える際,その初期像は,座談会でも述べられているように,一様の展開を示すものでないことは明白である.われわれがまだ把握していない部分が大部分であろう.急速に増殖する症例に関しては2週間程度の短期間でも大きく変化することを知った.このような症例に遭遇したとき,病巣のどの部分が変化したのか,本来は既にsm浸潤を示していたのではないかなどの対応観察が重要であることを本号では指教している.そして逆に急速に縮小した症例も呈示されている.食道粘膜癌が生検やヨード染色により予想もできないほど形態変化することは,食道専門医にとっては現在では常識となっている.しかし永井論文にみるごとく,明らかにsm癌と診断できる症例の中にも短期間に縮小した症例が存在する事実からは,食道癌の発育進展に関しては今後,宿主側の詳細な検索が必要であることを痛感する.一方,アカラシアやBarrett食道,腐食性食道炎など長い経過の後に発癌してくる疾患,ならびに発癌リスクの高い生活環境も明らかとなってきた.本号は,食道粘膜癌を見つけようとするには絶対にヨード染色が不可欠であることを読者に訴えている.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.