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食道m3・sm1癌の診断と遠隔成績の本号の特集は,あくまでも治療法に極端な侵襲の差のある食道癌の治療の適応拡大(特にEMR)を企図し,更に適応拡大ができない症例はどのような形態かを明らかにする点である.粘膜癌のm1・m2までの浅い癌の深達度診断は精密な内視鏡動的観察・色素内視鏡の駆使で専門施設の報告では97%以上,細径高周波超音波プローブによるsm2以深の症例では95%以上の正診率が得られる時代になった.問題はこの中間にあるm3・sm1の症例である.多くの施設ですらせいぜい20例以内の検討である.そこで今回,小山氏により21施設からm3:489例,sm1:260例,合計749例の全国集計がまとめられた.このうち初回治療が食道切除(おそらくリンパ節郭清術が施行されていると理解)が56%,EMRが30%の頻度であった.以上の背景からm3症例では9.3%,sm1症例で19.6%のリンパ節転移が確認された.この深達度症例群の他病死を除いた原病死については,食道切除・食道抜去(リンパ節転移の有無は評価はできない)・EMR症例の間に5年生存率に差がないとの結果が報告された.外科手術とEMR症例に当然,治療法選択にバイアスが存在すると思われるが,これだけの多数の症例での検討結果は大きく評価すべき点であろう.
さて主題論文査読からの印象として,深達度については検査方法別の特徴が正しく専門医から世界に発信できる成果および画像が提示されている.現在のところm3⇒sm1への自然史は判明しておらず,実際にとらえられないのが現状ではある.主題症例の報告を読み,本分野で行うべき課題として,まず実際の症例の反省点からの見直し,個々の症例からの実際的な細かい再検討が必要であろう.新しい研究課題としてm3・sm1のそれぞれの浸潤の二次元的評価のみでなく三次元的な体積の診断も提示され,今後の方向付けが示された.
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