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編集後記
神津 照雄
pp.1338
発行日 2000年9月25日
Published Date 2000/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104885
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「冒と腸」としては久しぶりに画像だけではなく,本文として読み応えのある特集であった.食道アカラシアはいまだ原因,治療法の確立されていない疾患であることは周知の点である.neurotransmitterからみた本症例の捉え方,病理からみた本症例の捉え方,機能疾患である本症例の形態診断,治療法に関する考え方などが主題で述べられた.主題症例では本疾患の問題点として,その存在を知らないと患者は放置され,また高率に発生する食道癌を早期の段階で見落とすことになる.本号では原因の不明な本疾患の最近の免疫染色,病理学的知見が述べられているが,あくまでも根本的治療に結びつく結論ではない.本号を読破することで食道に関する愁訴のある症例の疾患を理解できれば幸いである.本疾患では病悩期問が最も癌発生の危険因子であり,たとえ下部食道の拡張の治療が外科的・内科的に試行されたとしても,その危機感は減少しないのが特徴である.本疾患は若年者の発症が多く,長期的観察が必要であり,この点のinformed consentも大切な点である.多かれ少なかれ食道内には食物残渣,液体の貯溜があり,これらを排除した後の精密なヨード染色が不可欠な疾患である.以前の外科手術では逆流性食道炎-Barrett食道癌の発生が問題であったが,今日ではきめの細かい内視鏡観察により扁平上皮の粘膜癌の発見の機会が多くなってきた.癌発生部位は食道の拡張部に多いことも本号で明らかになった.最後に本疾患の存在を認識し,かつ病悩期間が短い段階で治療に入ることの重要性を強調したい.
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