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編集後記
神津 照雄
pp.740
発行日 2001年4月25日
Published Date 2001/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103224
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筆者が食道癌に興味を持ち始めた約30年前,千葉大学第2外科の内視鏡研究室の先輩が噴門癌の食道浸潤の内視鏡診断に取り組んでいた.当時はもちろん全例進行癌であり食道粘膜下層の口側診断が主体であった.本号を読み終わり,隔世の感がある.しかしいつの時代にもその時々で新たな問題点が浮き上がるものである.本号の主題症例,高木論文の9か月間の経過をみた症例はまさしくこの領域に興味を持つプロが根性で見つけた症例であろう.狭義の食道胃接合部にできる扁平上皮癌以外の癌の発生は胃腺窩上皮,食道噴門腺,固有食道腺,Barrettや異所性胃粘膜の円柱上皮から発生するはずである.病変のない食道胃接合部の材料からの詳細な病理検討により,噴門腺の局在部位も新しい見解が報告された.発育進展の検討では噴門癌の特徴として,高分化型として発生するが異型度が高く早期に深部浸潤を来し,結果的には低分化型進行癌を形成するとの推測も提示された.
診断については,まず病変の同定に始まるが,屈曲・蛇行のみられる部位であり,ミリ単位の早期癌を見つける努力には執念が必要である.本号ではX線造影,内視鏡撮影,生検採取のコッが提示された.今日ではどこの消化管癌でも早期の段階で診断さえつけば内視鏡手術やQOLの高い縮小外科手術が得られる時代になってきている.症例数の少ない噴門癌でも同様であり,主題症例でその点が強調されている.
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