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書評「CHOLELITHIASIS:Causes and Treatment」
大菅 俊明
1
1筑波大学
pp.722
発行日 1997年4月25日
Published Date 1997/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105123
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本書は現代の胆石学の最高峰である.手にしたとき,ついに上梓されたかと心中,快哉を叫んだ.この道一筋に歩まれた中山文夫名誉教授の30年以上に及ぶライフワークの待望の集大成である.本書には胆石症の様々なトピックスが自前の成績をもとに,詳しく解説されている.そして研究者のニーズに応え,臨床家の治療計画を助けることが意図されているが,見事なまでにその目的は達成されている.一語一語,読み進みながらその内容の深さに圧倒された.この分野では,わが国から初めて世界に向けて発信される記念碑的大作である.単独の著者によってこのような膨大な領域をまとめられた類書を知らない.快挙である.
胆石保有者は全世界で膨大な数にのぼり,加齢とともに頻度が増すので,その対策は高齢社会において重要な意義を持つ.胆石症はエジプトのミイラ以来の人類のありふれた病気だったので関心は高く,その研究は消化器病学の桧舞台の1つであった.明治以来,九州大学第1外科教室はわが国の胆石研究の指導的役割を果たしてきた輝かしい伝統を持っている.著者の中山文夫名誉教授は三宅速教授,その令息の三宅博教授の後を継がれて16年間,教室を主宰された.学問的伝統を背負い,外科医として,更にまた薬学科において化学者としての素養を加えたのち,米国のJohnston教授のもとに学んだ著者は,1957年,既に胆汁酸とレシチンによる非手術的胆石溶解の試みを発表されている.このことはRainsの胆石の著書にも先駆的業績として紹介されたが,その後も国際的研究者として華々しい活躍をされ,多数の論文を世に問われた.本書はその長い研究成果の精髄である.
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