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「十二指腸乳頭部病変」が本誌に初めて主題として取り上げられたのは1972年,第7巻11号である.それから16年を経過した1988年,第23巻10号に「十二指腸乳頭部癌」を主題とした特集号が刊行されている.
第7巻をひもといてみると,十二指腸乳頭部病変に対する当時の状況を知りえて興味深い.第7巻を所蔵していない読者も多いことと推察されるので,その内容を振り返りながら少し紹介してみよう.すなわち,第7巻には主題としてX線診断と内視鏡診断が各々2題ずつ取り上げられており,これに座談会を加え構成されている.X線診断では,低緊張性十二指腸造影による乳頭像と,経皮経肝直接胆道造影法(PTC)による胆管像の両面から検討が加えられ,まず十二指腸乳頭部の正常像,次いで異常病変像が述べられている.内視鏡診断ではVater乳頭部と乳頭開口部の正常形態に続き,良性病変を交えての乳頭部の内視鏡的異常像,生検診断,ERCPなどの論文である.当時は乳頭部癌を独立疾患とするよりは膨大部癌,膵癌を含めて乳頭部領域癌として扱われている.主題症例では乳頭部癌が5例,異型上皮など境界病変が3例報告されていることは興味深い.内視鏡像は画像もまだ小さく,やっと十二指腸が内視されるようになりましたという感じがしないでもない.したがって,基本的には低緊張性造影が診断の主役であり,大手を振ってまかり通っていたと言える.当時の編集後記をみると,“低緊張性十二指腸造影法が唯一の形態学的検査法であるという従来の考え方に対し,数年来ファイバー十二指腸鏡(原文)の開発進歩により,直視下にこれを観察し,生検や細胞診が行われるようになり,診断成績も更に向上した.十二指腸も胃や食道と同様,診療の第一線の医師にとって自由に料理しうる臓器となり,今後の進展が楽しみである(春日井達造)”とあり,いわば乳頭部癌の黎明期にあったと言える.
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