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書評「〈総合診療ブックス〉誰でもできる緩和医療」
柏木 哲夫
1,2
1大阪大学人間科学部
2日本緩和医療学会
pp.1540
発行日 2000年11月25日
Published Date 2000/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104918
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タイトルに“緩和医療”がつく書物や雑誌がここ数年かなり出版されるようになった.この分野の重要性が認識されるようになってきた1つの証拠であろうとうれしく思っている.それぞれの書物に特色があるが,本書の特徴を一言で言えば,“緩和医療(palliative medicine)を日常診療で活用するための,実地の医療技術に主眼を置いた解説書”である.更に言えば,本書は緩和医療の専門家向けにではなく,医療の最前線の一般医や看護婦に向けて,癌患者の症状緩和や工夫を,最新のトピックスを含めて平易に解説しているということである.
“緩和医療”という概念が広がりつつあるというのが今世界の流れである.まず緩和医療の対象となる疾患が癌のみならず,エイズや進行性の神経筋疾患,慢性の呼吸器疾患や循環器疾患,老年期の慢性疾患など,広い範囲に広がってきた.更に,病期のあらゆる段階に適用されるようになってきた.例えば,癌の場合,診断の直後,積極的な治療の最中,再発の時期,末期の時期,患者の死後の家族のケアなど,あらゆる時期に緩和医療の基本的な考え方と具体的な技術が適用される.それゆえ,緩和医療に関する知識はホスピスや,緩和ケア病棟で働いている医師やナースのみならず,癌治療に従事しているスタッフや.一般医にとっても,一般病棟のナースにとっても必要なのである.
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