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本書はなかなか欲張った仕上がりになっている.まず縦に読むと,小児科のみならず,内科や救急外来の診察室での「診療支援」として有用である.よく遭遇する小児の熱や嘔吐など12の症状から見落としのない診断と初期対応に至るチェックリストが装備されている.緊急性のある疾患,頻度は低くとも見逃してはいけない疾患も鑑別診断としてチェックされるようになっているので,診察直後にもう一度そのページを参照するとよい.さらに,他科,他医療機関へのコンサルトのタイミング,陥りやすい過ちと対策,ホームケアもあげられている.また,成長と発達,思春期,健康診断,予防接種,迅速検査,超音波検査,服薬指導なども同様のスタイルで記述され,例えば予防接種の可否など実際的な疑問をも解決してくれる内容である.興味をそそって読みやすくしているのは,典型的症例と教訓的症例の提示と解説,FAQ(frequently asked questions)スタイルの「アドバイス」,重要ポイントを解説した「Note」であり,これらの囲み記事は視覚的効果も上げており,拾い読みにも便利で有益である.
本書は寝そべって横に読むのもよい.親や本人の訴えをよく聞くこと,全身をよく診ること,一般状態の評価,徒手診断,小児は親の付属物ではなくて尊重すべき独立人格たること,家庭療法と環境整備,自分(自院)の限界,医療情報の整理,コメディカルの協力などがわかりやすく,繰り返し述べられて,自然に「診療の質向上」が図られている.執筆者は第一線で毎日小児をたくさん楽しく診ている方々なので,誰が読んでも納得,再認識,目から鱗の楽しい内容となっている.「Appen-dix」では,執筆者がありふれた感染症をテーマに座談会を行っている.個々の疾患に複数の思考,実践が語られておもしろい.これが本書の「幅」をさらに広げている.
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