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書評「メディカル クオリティ・アシュアランス―判例にみる医療水準」
玉田 太朗
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1自治医科大学産婦人科学
pp.1248
発行日 2000年9月25日
Published Date 2000/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104865
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本書は,医師であり弁護士である著者が,戦後の新体制になった昭和22年から平成11年10月までの判例を検索し,医療過誤判例1,250例のうち,古くて現在の臨床とは無関係なものを除く910例について,過誤に直結した医学的問題点を抽出・集約した大変な労作である.その症例は,すべての診療科にわたっているが,更に,上記の910例のうち368例―したがって各科の代表的な事案がカバーされている一については,事案の概要と裁判所の判断が数行の囲み記事として,症例報告的にまとめられている.
第一章は医事訴訟の概要であるが,医師の民事責任,刑事責任の根拠条文や解決手続,行政処分になる場合などが必要かつ十分に記述されている.本書によれば,医師の過失は大別して技術的ミスと説明義務違反に分けて考えることができるという.説明義務の重要性を改めて教えられたが,第二章が説明義務に割かれている.代諾の可否,説明が不要な場合,癌告知など微妙な問題の解説も簡明である.法律的な総論は,この2章にまとめられているが,出生前診断,脳死と臓器移植,遠隔医療,宗教上の輸血拒否,臨床試験におけるインフォームドコンセントなど最近のトピックスについても最新の判例に基づく医師の義務が明確に述べられている.
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