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書評「メディカルクオリティ・アシュアランス―判例にみる医療水準」
落合 武徳
1
1千葉大学医学部第2外科
pp.1168
発行日 2000年8月25日
Published Date 2000/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104846
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本書はこれから医療を始める研修医,第一線の医療に携わっておられる大病院の医師から開業医の先生方を始め,大学病院で先端医療と同時に医学教育に携わっているわれわれも含めて,つまり医師として医療に従事しているすべての方々に読むことをお薦めしたい貴重な書である.著者の古川俊治氏は1987年に慶應義塾大学医学部を卒業した後,文学部(1993年),法学部(1996年)も卒業し,司法試験に合格して弁護士資格を取得されている.現在,慶応大学の消化器外科で腹腔鏡手術やロボット手術などの先端的な医療に取り組むかたわら,弁護士としても活躍しておられる.2000年4月に開催された第100回日本外科学会総会において,北島政樹会長は慶応病院と川崎市立病院を結んでtele-surgeryによる遠隔地医療を実践してわれわれを感嘆させたが,古川氏はその法的問題について詳細に解説された.外科医にして弁護士であるという日本では希有で貴重な存在である.
現在,連日のようにマスコミは医療ミスを報じている.そのようなミスを防止するために各病院ではヒヤリハットレポートなどを作成して,業務管理の上からリスクマネジメントに力を入れている.それと同時に,医事紛争を避けるためには日々進歩を続ける医療において,現時点の水準にかなった医療を提供することが重要で,これが本書のタイトルであるクオリティ・アシュアランスの概念である.アメリカではリスクマネジメントとクオリティ・アシュアランスは重視されていて,各州の医師資格更新のための講習会には10%含まれることになっているという.
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