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書評「肝転移―メカニズムと臨床」
武藤 徹一郎
1
1癌研究会付属病院
pp.1146
発行日 2000年8月25日
Published Date 2000/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104843
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癌を専門とする医師にとって“転移を制する者は癌を制す”とはよく知られた言葉である.転移の代表はリンパ行性転移と血行性転移であり,後者で最も多いのが肝転移であることもよく知られた事実である.転移にはこの二大本流が存在するにもかかわらず,なぜか拡大郭清によるリンパ節転移へのアプローチが従来からの主流であり,肝転移に対するアプローチは後塵を拝していたように思う.切除可能な症例が決して多くはなかっただけでなく,転移機構の研究手法も限られたものであったのが,肝転移の研究に勢いがなかった主たる理由であろう.
ところが,最近の分子生物学的研究の発展のおかげで,にわかに肝転移機構の研究は花形の1つになった.反対にリンパ節転移のほうはどうなっているのと叫びたいほどの違い方である.本書は磨伊正義教授を中心に,清木元治教授,高橋豊助教授が協力者となり,ほとんどが金沢大学の関係者で執筆された,肝転移に関する好著である.著者も序文に記しているように,肝転移に焦点を絞った成書は日本では類をみない.誠に時宜に合った名著と言うべきであろう.
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