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書評「肝・胆・膵の外科臨床」
武藤 輝一
1
1新潟大学
pp.1534
発行日 1979年11月25日
Published Date 1979/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107845
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今回,本邦での肝,胆道,膵の外科において現役の第一人者と目される葛西洋一,佐藤寿雄,土屋涼一の3先生とその教室の方々により“肝・胆・膵の外科臨床”が出版されることになった.外科医がこれらの臓器の疾患の診断をまずどのように進めるべきか,手術の適応や術式のあり方を含めての検査を実際どのように行うべきか懇切丁寧に書かれており,そして治療はどのように行うべきかを著者の豊富なかつ卓越した経験をもとに述べられている.その序文の中でし“……あるいは一方に偏した記載があったかもしれないことを恐れている.……”と謙虚に述べられているが,にじみでるような深い臨床経験をもとに思いきってこうあるべきと思われることを書かれているからこそ大変実のある著書となったのであろうと思っている.手術術式の中のさらに細かい点になれば読まれた方と意見の異なるところもあろうが,全体を通じ自らの考えだけにとらわれず,他の多くの報告者の名前とその意見をあげ,文献として見易いよう列記されてある.手術標本,手術時の写真,組織標本も必要かつ十分な程度にとどめられているほか,イラストは外科医自身が書かれているため大変理解し易い.この種の疾患のある患者を受け持ち診察をすすめるに当たって,あるいはその後の検査から治療までを一貫性をもって記載されており,外科研修医は勿論のことであるが,それよりも第一線で活躍されておられる外科医の方々にとっての指導書となるものであろうと感じた次第である.読むほどに本書の内容にひきこまれて行くように感じたのが本書の特徴でもある.若い外科医の方々にも経験豊富な外科医の方々にも是非お奨めしたい絶好の指導書である.
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