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書評「ヘリコバクター・ピロリ フォーラム―病態と治療の最前線」
佐藤 信紘
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1順天堂大学医学部・消化器内科
pp.46
発行日 2000年1月25日
Published Date 2000/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104626
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New South Wales大学のA.Lee教授の話では,1999年4月に上海で開かれたヘリコバクター・ピロリ(HP)に関する国際ワークショップで,HP専門家と称する13名に会の初めに"HPが胃癌の原因と考えられる十分な証拠があると思うか"とのアンケートをとったところ,5名がNoと答えたという.ところが3日間の討論を終え,会の終了時に再び同じ質問をしたところ,全員がYesと答えたという.すなわち専門家といえども個別的には新たなデータや考えにはすぐに賛同できず,HPと胃癌の関わり合いはまだ明確でないと思っていたが,疫学データや科学的実験事実を十分吟味・評価すると考えが改まったというのである.当然ながら人類はこのようにして多くのことを学び進歩してきた.
このたび藤岡利生,榊信廣両博士の編集による表記の書物は,日本の誇る若手HP研究者による最新のHP情報をまとめたものである.
一体HPは胃にどのようにして感染・定着するのか,酸分泌機能や粘膜をどのようにして傷害するのか,HP菌種によって違いはあるのか,免疫系がどのように関連するのか,など,今なお未解決の難しい問題が先に記載されているが,ここは実地医家は必ずしも必読ではないと思う.
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