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白壁彦夫先生追悼特集 追悼座談会
白壁先生と私
Memorial Addresses
下田 忠和
1
Tadakazu Shimoda
1
1国立がんセンター中央病院臨床検査部
pp.1722
発行日 1995年12月25日
Published Date 1995/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105625
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突然のことであった.昨年の夏,細胞診の標本を見せられ,ふと名前を見ると白壁彦夫と記載されていた.プレパラートの上には明らかな癌細胞が多数見られ,しかも悪性度は相当高いことが一目で判断できた.私は自分の目を疑ったが,人違いではなかった.すぐに先生に確かめたところ,先生は左鎖骨上の腫瘍に数か月前から気づかれ,国立がんセンターの外来を受診され針生検を受けておられたのである.その後の経過は思わしくなく,本当に残念な結果になってしまった.御自分が転移を来した高悪性度の癌であることを知られてからの4か月間,先生は見事な人生を過ごされた.決して病気のことをおくびにも出さず,公私にわたっていつもと同じように振る舞っておられた.その努力は,私には痛いほど感じられ,私にも同じ振る舞いができるかと考えると頭の下がる思いであった.
昨年の札幌での消化器内視鏡学会は先生の最後の公式でのお姿となったが,そのときは既に消化器症状も出現し,相当つらいようであられた.しかし表面型大腸癌のX線診断にかける先生の執念はものすごいものがあり,若い医師にその診断が可能でかつ深達度診断はX線診断が有利であることを示された.これは先生の生涯を通じて確立されたX線診断の重要性を改めて遺言として残されたものと思われる.
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