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ひだの集中像はわが国では粘膜集中像とも訳されているが,潰瘍あるいは潰瘍瘢痕に向かって周囲から粘膜ひだが集中する現象を指す.これを初めて記載したのはEisler-Lenk(1921)である.成因については一般に粘膜筋板のAutoplastik(Forssell,1913)と潰瘍底の瘢痕収縮によると考えられている.Hauser(1926)は大きさが1cm以上で筋層深くまで達していて,粘膜筋板と固有筋層との融合を伴う潰瘍に著明なひだ集中像を認めており,潰瘍が大きくて深いほどひだ集中像は著明に現れると述べている.
ひだ集中像は潰瘍の新旧や治癒傾向の判定,更に良・悪性の鑑別にも利用される.熊倉は粘膜集中を3種類に分類し,その臨床的意義を次のように述べている.①粘膜集中がないか,はっきりしない潰瘍は一般に比較的新しい潰瘍で著明に縮小しうる.②中断した粘膜集中は比較的新しい潰瘍の症状で,適当な治療によって急速に縮小し得る.③潰瘍の全周にわたる中断しない粘膜集中は比較的古い潰瘍の症状で,縮小しにくい.通常Ul-Ⅳ(少なくともUl-Ⅲ)にみられる.④特殊な粘膜集中は比較的古い潰瘍の症状で,Ul-Ⅳ(少なくともUl-Ⅲ)にみられる.⑤潰瘍周囲に部分的に,中断しない粘膜集中のある潰瘍はまだ縮小しうることを示唆しており,再発ないし再然の症状とも考えられると.集中する粘膜ひだは良性潰瘍では潰瘍縁ないしその周辺でなだらかに中断するが(Fig. 1),陥凹型早期胃癌では陥凹縁で階段状の急激な中断像を(Fig. 2),また,陥凹型の進行癌では隣接するひだ同士が陥凹縁で融合を示す(Fig. 3)ことが指摘されており,陥凹性病変の良・悪性のみならず深達度の重要な診断指標として診断に役立っている.
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