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書評「消化管エコーの診かた・考えかた」
秋本 伸
pp.1178
発行日 1998年7月25日
Published Date 1998/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103783
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消化器領域の臨床で超音波検査が必須のものになったことは誰も異論のないところであろう.しかし,こと消化管については今日必要性,有用性いずれについても認知されているとは言い難い.この点は著者自身が本書の序に記しているとおりである.かつて消化管の超音波診断(例えば潰瘍の超音波所見の検討といったようなもの)については診断機器の精度の問題もあり学会レベルでも厳しい評価がなされることが一般的であった.かくいう私も正直なところ消化管に対してはごく限られた疾患以外役に立たないと考えた時期がある.著者がその当時から一貫して超音波による消化管診断の可能性について主張し続けてきたことは注目すべきであり,パイオニアと言っても過言ではなかろう.今日多くの消化管疾患にとって超音波検査が役立つことは本書に示されたとおりで,筆者も現在は消化管の日常診療で超音波を大いに活用している.
著者らのこの領域での先駆者としての自信のほどは,豊富な経験症例の呈示にも見てとれる.胃十二指腸潰瘍,回腸炎,大腸炎,虫垂炎,消化管腫瘍,ヘルニア,腸閉塞,そのほか様々な典型的超音波所見が示されている.しかし著者の自信は,何よりも消化管超音波診断法についての主義主張が明確で説明に迷いがない点に最もよく現れている.
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