--------------------
書評「食道静脈瘤の診かたと治療」
岡本 英三
1
1兵庫医科大学
pp.141
発行日 1987年2月25日
Published Date 1987/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112202
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
ここ10年間で最も目覚ましい治療成績の向上をみた身近な疾患と言えば,肝癌と食道静脈瘤が双壁である.両方とも肝硬変症という難病の経過中に発生する難症中の難症であり,それまでの治療成績が悪過ぎたと言えばそれまでであるが,それにしても最近の両疾患の治療成績の向上は一昔前に比べると驚くべきものがある.私は長年肝癌と取り組んできたが,硬変症治療の両輪の他方である食道静脈瘤の治療法の発達は,静脈瘤合併肝癌の治療成績向上となって,われわれも大いにその恩恵に浴している.
食道静脈瘤に対するこの治療成績の向上の根底には,関連各科の協力による集学的治療の成果に負うところが大きい.すなわち,内視鏡の積極的導入,経皮経肝門脈造影法とその応用,更には内視鏡的硬化療法の開発など,それまでの手術一本の時代から,数多くの治療手段を患者の容態に応じて組み合わせたり選択したりできるようになったことにあると思う.しかし反面,食道静脈瘤の治療にたずさわる施設は,これらの多様化した治療手段のすべてに習熟していることが今や必須の条件である.この意味において,このたび医学書院から,徹底した技術指導書とも言うべき「食道静脈瘤の診かたと治療」が刊行されたのは誠に時宜を得たものと言える.
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.