--------------------
編集後記
吉田 茂昭
pp.538
発行日 1998年2月26日
Published Date 1998/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103648
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
わが国では消化管悪性リンパ腫は比較的まれな疾患であるが,これまで癌(特に早期癌)の代表的な鑑別対象として,診断学的な意義のみが前面に位置づけられてきた.言わば徳川300年の中に安住していたようなものである.この安寧を打ち破った黒船がIsaacsonであり,今から約15年前のことになる.この黒船襲来によって消化管悪性リンパ腫をめぐる世の中の動きはまさに激動というべき状況に突入し,旧秩序の崩壊と新秩序への収斂が始まった.この間,様々な混乱と発見とが交錯し,最近,ようやくある程度共通の理解が得られるようになったが,残念ながら,症例ごとの病理学的,臨床的対応を見ると診断医によって様々であるというのが偽らざる現状である.一方,この黒船の襲来は胃悪性リンパ腫がHelicobacter pylori感染を機とした免疫機構の異常に由来する可能性を教えたが,この画期的な病因論は新たな研究課題を提供するとともに,除菌療法の追求は外科的切除における適応の問題に肉薄し,更には化学療法や放射線療法をはじめとする非外科的治療の可能性を再認識させるなど,治療の分野においても新たな展開をもたらしつつある.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.