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編集後記
吉田 茂昭
pp.1448
発行日 1991年12月25日
Published Date 1991/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102734
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集団検診の目的は,健常者の集団を対象とした早期診断によって癌死亡率を低下させ,生存率の向上を図ることにある.したがって,集検レベルにおいては,死なない段階で癌が発見できればよいことになる.今回の特集は,胃集検の第一線施設の現況からみて,成熟段階における間接X線集検ではどのような病変が発見され,どのような病変が見逃されやすいかを明らかにすることで,今後の集検を展望できればと思い企画した.各論文の成績には共通な部分も多く,間接X線による集検発見癌の特徴がうかがわれた.すなわち,進行胃癌についてはほぼ満足できる発見率であるが,早期胃癌,殊に未分化型ではかなり不良であること,C領域の診断に問題のあること,近年の診断精度の向上は明らかであるが,逐年検診がなお必要であることなどである.
今回の特集で,志賀論文はB方式(内視鏡集検)を対照とした場合の間接X線撮影における診断精度の実態と問題点を明らかにしているが,早期胃癌に対する診断精度は内視鏡集検に比して極めて不良であり,このことは今後の集検の在り方を問ううえで,大きな問題を投げかけているように思われる.集検の目的が死なない癌の発見であるならば,診断精度を微小胃癌レベルに求めることは酷であろうし,またコストとの折り合いも常に問題となる.間接X線集検の診断精度の向上がどの程度まで可能であるか,集検発見胃癌の特徴,集検発見不能癌の特徴などから,もう一度考えてみる必要がありそうである.
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