Japanese
English
今月の主題 大腸低分化腺癌の初期像とその進展
序説
大腸低分化腺癌の初期像とその進展
Introduction
田中 信治
1
Shinji Tanaka
1
1広島大学病院内視鏡診療科
キーワード:
早期大腸癌
,
低分化腺癌
,
発育進展
,
転移
Keyword:
早期大腸癌
,
低分化腺癌
,
発育進展
,
転移
pp.1731-1732
発行日 2010年10月25日
Published Date 2010/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102035
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大腸の粘液癌,印環細胞癌および低分化腺癌(Table 1)1)は全大腸癌の4%程度とまれな組織型であり,一般に右側結腸に発生頻度が高いとされている.また,大腸低分化腺癌は発見時進行例が多く予後不良とされており,その早期診断は重要な課題である.しかし,発生直後から急速に進展するためであろうか,臨床的にその早期診断は極めて困難であり,画像や臨床材料のそろった臨床的報告例は極めて限られている.そのため,臨床のみならず病理学的にもその組織発生および発育進展様式は,いまだ明らかになっていないのが現状である.
一般に,大腸SM癌は10%前後にリンパ節転移を生じるが,分化型腺癌と比較して低分化腺癌ではその頻度が優位に高く,悪性度の高いことがわかっている.現在のところ,きちんとした臨床材料で転移を来した大腸粘膜内癌は世界中で1例も報告がないものの,大腸粘膜内癌のほとんどは分化型腺癌であり,低分化型粘膜内癌が転移能を持つのか否かは不明である.また,早期低分化腺癌とは言っても分化型腺癌から進展移行した病変も多く,de novo発生した粘膜内癌としての低分化腺癌の頻度や特徴はまったく不明である.以前から,この「胃と腸」誌の企画案として「早期大腸低分化腺癌」は主題の候補の1つには挙がってはいたが,前述のごとく症例数が極めて少ないため時期尚早であるということでずっと“待った"がかかっていたという経緯がある.しかし,時を重ねた今,ついにこの「早期大腸低分化腺癌」という主題を「胃と腸」誌で取り上げることが編集委員会で決定された.
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