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はじめに
内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)は局所切除度の飛躍的な向上をもたらし,内視鏡治療の適応を大幅に拡大しうる治療手技として受け入れられつつある1).将来的には,ESD単独でかなりの部分の早期胃癌がその治療を完結できるようになることが推察される.一方,リンパ節転移が否定しきれない“真の内視鏡的切除適応外病変”に対しては,たとえ局所が内視鏡的に完全切除しえても,内視鏡治療のみで癌としての治療を完結することは許容されず,リンパ節郭清を伴った何らかの胃切除が標準治療である2).しかし,ESDにより高い局所切除度が得られるようになった現在,リンパ節転移に対するなんらかの戦略を講じれば(ESD+αで),この画一的な胃切除を回避できる場合は少なくないと考えられる.なぜなら,早期胃癌の多くはリンパ節転移陰性例であり3)~6),それらに対するリンパ節郭清の意義は不明だからである.
われわれは,このような観点から,ESDと腹腔鏡下手術の併用療法を考案し,一部の“真の内視鏡的切除適応外病変”に対し,画一的な胃切除を回避する試みを行ってきた(Table 1)7)8).このESDと腹腔鏡下手術の併用療法は,先行するESDにより,局所完全切除と病理組織学的情報を得ることと,腹腔鏡下リンパ節郭清術(laparoscopic lymph node dissection)によって組織学的リンパ節転移の有無を確定することを目的としているが,究極の目的は全胃温存である.本法にあたっては,まずESDで局所が完全切除(一括切除で水平・垂直断端陰性)されていることを大前提としている.リンパ節郭清範囲に関しては,原発巣の腫瘍部位と,術中内視鏡下ICG(indocyanine green)粘膜下層局注による緑染リンパ管・リンパ節の肉眼的観察を参考として決定している.リンパ節転移の有無は,精度の低い術中迅速診断ではなく,永久標本による病理検索で判定している.リンパ節転移陰性が確認できた場合は経過観察(全胃温存),リンパ節転移陽性であった場合は追加手術(胃切除+追加リンパ節郭清)を基本方針としている.
本法(ESD+腹腔鏡下リンパ節郭清術)は,内視鏡的切除と胃切除術の大きなギャップを埋める新しいオプションであり,リンパ節転移の有無の確率論のみから画一的な胃切除術が施行される現状のなか,その手術が本当に必要な患者を選別する方法として期待できると考えている.本稿では,症例を供覧するとともに,本法の実際と成績を述べ,本法の将来展望について考察する.
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