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低侵襲治療への流れ
従来,早期胃癌に対する治療は外科手術が第一とされ,その根治切除は胃の3分の2以上の切除とD2リンパ節郭清が標準術式と定められ,画一的に行われてきた.どんなに小さな癌を発見しようとも,形態的にみてM癌やSM癌などと深達度診断しようとも,外科治療の領域ではあまり術式に関係のないことであった.1980年代に入り早期胃癌診断の充実に伴い,内科領域で多田ら1)が画期的な内視鏡的切除治療(endoscopic mucosal resection ; EMR)を発表,内視鏡医に支持され急速に拡がり,患者に大きな福音をもたらした.一方,外科サイドでもリンパ節郭清を伴う広範囲胃切除では,根治性は保てるが機能やQOLの面で問題が残るなどの点から縮小手術の方向が検討されるようになり,術後の機能温存を目的とした幽門保存胃切除術や迷走神経温存胃切除術,さらには腹腔鏡下局所切除が考案されるに至り,早期胃癌の治療法は“低侵襲”をキーワードに大きく変化した.
リンパ節転移の壁
2000年代になると,内視鏡的治療はEMRからさらに進歩を遂げ,小野ら2)のITナイフの開発に始まるESD(endoscopic submucosal dissection)が台頭し,その切除法の特性を生かして,2cm以下であった適応をさらに大きさの点からも深達度の点からも拡大する方向をめざし,早期胃癌の内視鏡的治療はますます大きく展開していく様相を呈している.しかし,手術のできる患者を対象にして根治をめざせば,いずれリンパ節転移の壁にぶつかる.すなわち,内視鏡的局所切除の限界に次第に近づき,リンパ節転移の可能性があるSM癌であった場合どうするのか,SM深部浸潤の程度が何%のリンパ節転移率までなら許されるのか,どのような形態のものまでをM癌として適応拡大範囲とするか,が検討課題となってくる.
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