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早期大腸癌の内視鏡治療の適応を考える場合,いろいろな条件があるにせよ,一応の目安は癌の垂直浸潤距離が1,000μm以内であることが検証されている.この基準は第56回大腸癌研究会(2002年2月,渡辺英伸当番世話人),同研究会の中に設けられた「sm癌取り扱いプロジェクト研究委員会」(長廻紘委員長)1などの場で討論された議論を基礎に定められた基準である.過去に切除された多数の早期大腸癌の深達度と転移の有無を集積して導かれた結論であり,症例数に裏付けられたエビデンスであるだけに重みがある.この基準は同時に内視鏡治療の限界をも明示するものである.その詳細は本誌第39巻10号において,主題「大腸sm癌の深達度診断―垂直浸潤1,000μm」として記述されている2).本号の特集を読むにあたって,これらの主題論文を振り返ると意義深いであろう.
大腸癌研究会では「大腸癌治療ガイドライン検討委員会」(杉原健一委員長)において,大腸癌の治療指針3)をまとめた.ここで記述されたガイドラインは,過去の一連の研究成果を基に作成した貴重なコンセンサスである.この「大腸癌治療ガイドライン」の序文の中で,武藤徹一郎会長は“人は誰しも,どの病院へ行っても同質のがん医療が受けられることを期待している.同質でしかも質の高いがん医療を,病院の如何を問わずに提供することががん医療の理想の姿であるが,現実にはそうではない”としており,大腸癌治療の均一化を果すためのガイドラインを臨床医,病理医に提示することを目標としている.その過程で“過剰診療・治療,過小診療・治療の解消ができることを期待する”としているが,臨床医が注目すべき耳の痛い提言でもある.
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