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2004年9月の早期胃癌研究会は9月15日(水)に東商ホールで開催された.司会は川口実(国際医療福祉大学附属熱海病院内科)と樋渡信夫(いわき市立総合磐城共立病院)が担当した.また,第10回白壁賞・第29回村上記念「胃と腸」賞の授賞式が行われた.
〔第1例〕 75歳,女性.特異な形態を呈したGISTの1例(症例提供:徳島大学臓器病態治療医学 岡村誠介).
検診目的で上部消化管内視鏡検査を受け胃体上部小彎に約5cmの隆起性病変を指摘され来院.
X線の読影は安保(札幌厚生病院胃腸科)が行った.噴門直下小彎の胃内腔に突出する隆起性病変で表面滑らかで,隆起を粘膜が被っている.隆起の一部がさらに結節状に突出する形態であり,さらにこの腫瘤自体の重みで垂れ下がっている.中央部はやや凹んだ部が存在する.これらの所見から粘膜下腫瘍と読影した.粘膜下腫瘍の鑑別については頻度からleiomyomaを一番疑うとした.小沢(わたり病院消化器科)は多結節状であり,部位も考え合わせると鑑別診断にsubmucosal heterotopiaを挙げておく必要があるとした.細川(福井県立病院外科)は表面がnodularな構造を有し,空気量により形態が変化することよりGIST(gastrointestinal stromal tumor)などの内部充実性の腫瘍は考えにくくむしろ軟らかい腫瘤を考えておく必要があると述べた.内視鏡所見(Fig. 1)では安保は2こぶ状の隆起で,頂部の陥凹部(びらん)は辺縁整で癌を疑う所見を認めない.基部はほぼ正常の粘膜に被われている.しかも基部の一部が空気量で変化するので,基部と頂部では性格の異なる腫瘤であると読影し,inverted hamartomatous polypなどを考えておく必要があるとした.超音波内視鏡所見を芳野(藤田保健衛生大学第2教育病院内科)が説明した.腫瘤は第4層と連続し,2こぶ状を呈するがEUS上は同じ成分から成り,すなわちほぼ均一な低エコーを示すが,その底部に無エコー部を有する腫瘤とした.
病理は佐野(徳島大学病理)が解説した.腫瘍はepithelioid patternを有するGISTで大きなcystを形成しており,このcystに相当する部が基部であり,内視鏡的に軟らかいと読んだ部に一致する.腫瘍は胃内外発育型GISTで大きなcystを伴っていることが特異な症例であった.cystの形成機序は腫瘍が壊死を起こし脱落した可能性があり,epithelioid patternを有するGISTは間質が浮腫状になったり,嚢胞形成を起こしてくることが特徴であると下田(国立がんセンター中央病院臨床検査部)が追加した.
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