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2004年2月の早期胃癌研究会は2月18日(水)に東商ホールで開催された.司会は小野裕之(静岡がんセンター内視鏡部)と多田正大(多田消化器クリニック)が担当した.mini lectureは門馬久美子(都立駒込病院内視鏡科)が「食道内視鏡検査―陥凹型食道表在癌の深達度診断」と題して行った.
〔第1例〕 80歳,女性.異所性胃腺から発生した胃型胃腺腫(症例提供:田主丸中央病院消化器科 久原敏夫).
主訴は体重減少.X線・内視鏡の読影は光永(東京女子医科大学消化器内視鏡科)が担当した.胃造影所見(Fig. 1)では,体中下部前壁の,頂部に陥凹を有する隆起性病変を指摘した.一見粘膜下腫瘍のように見えるが,頂部に不整形の陥凹面を有し,上皮性病変すなわち癌を第1に考えるとした.田中(広島大学光学医療診療部)は,圧迫所見にて形態が変化し,柔らかい腫瘤であり,異所性胃腺が粘膜下に増殖し,表面に開口したような良性病変も考慮する必要があると発言した.内視鏡所見の読影では光永は,小型ながらMP以深に浸潤した癌とした.田中,赤松(信州大学医学部附属病院光学医療診療部)は,腫瘤は柔らかく,陥凹部にもvillousな表面構造が残っていることから,深く浸潤しているためというよりは,粘膜下層の異所性胃腺の増殖があるためではないかとし,その一部が癌化している可能性を示した.
病理は池田(福岡大学筑紫病院病理)が説明したが,腫瘍は幽門腺類似の細胞が密に増生しており,免疫染色にて胃型の形質を呈した.腫瘍の辺縁に異所性胃腺と思われる組織がみられ,粘膜下層の異所性胃腺から生じた幽門腺型胃腺腫と診断した.下田(国立がんセンター中央病院臨床検査部)からは,異所性胃腺から生じたという証拠に乏しいのではないかとコメントがあった.臨床的には腫瘍の固さに注目することでoverdiagnosisを防ぐことが可能と思われた症例であった.
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