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2004年6月の早期胃癌研究会は6月16日(水)に日本教育会館で開催された.司会は鶴田修(久留米大学第2内科)と門馬久美子(都立駒込病院内視鏡科)が担当した.mini lectureは村田洋子(ムラタクリニック)が「EUSと病理―入門編」と題して行った.
〔第1例〕 54歳,女性.早期肛門管癌の1例(症例提供:札幌厚生病院胃腸科 黒河聖).
腹痛と便秘を主訴に来院した患者である.読影は清水(大阪鉄道病院消化器内科)がX線・内視鏡とも担当した.X線では直腸下端歯状線近傍に基部を有する径3cm弱の立ち上がりが急峻な丈の高い隆起性病変で,一部に陥凹を有するが表面はおおかた平滑であり,粘膜下腫瘍と診断した.さらに質診断を行うには色調や硬さの情報が必要ともコメントした.内視鏡では肛門管に基部のある病変で,粘膜下層に病変が存在し,表面には滲出物で覆われたびらん面とびらんのない部が存在し,びらん以外の部は上皮で覆われている(Fig. 1)が,それが腫瘍か非腫瘍かも腺上皮か扁平上皮かもわからず診断に苦慮するとした.平田(大阪医科大学第2内科)はびらんのない部の表面は拡大観察による血管像が食道癌で見る血管所見に類似しており,腫瘍性の扁平上皮が露出した扁平上皮癌で,深達度は筋層以深とコメントした.山野(秋田赤十字病院消化器病センター)は拡大観察所見からは正常の腺上皮で覆われた粘膜下腫瘍であり,pit patternの読みが難しいのは機械的刺激による腺上皮の変性・萎縮のためだろうとコメントした.小山(佐久総合病院胃腸科)は表面が腺上皮か扁平上皮かわからないが,扁平上皮だとしたら血管に口径不同や太い血管がないのでsm massiveに浸潤した癌が表面に露出したものではないであろうとコメントした.
病理は村岡(札幌厚生病院病理)が説明し,肉眼的には歯状線をまたぐ形で発育した大きさ2.6×2.1cm,高さ1cm強の隆起性病変で,組織学的には肛門管より発生したm部も存在するsm3の0-Isp型扁平上皮癌であるとし,表層の血管は腫瘍間質の血管であるとした.最後に小山と門馬(都立駒込病院内視鏡科)が食道癌ではこの症例にみられたような血管でsm massiveの診断はできないとコメントした.
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