- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
2004年3月の早期胃癌研究会は3月17日(水)に東商ホールで開催された.司会は牛尾恭輔(九州がんセンター)と馬場保昌(早期胃癌検診協会)が担当した.mini lectureは,「小腸のGIST」として,渕上忠彦(松山赤十字病院消化器科)が行い,長年にわたる先生の研究の一端を示され,聴衆に感銘を与えた.
〔第1例〕 72歳,男性.粘液結節の成分により隆起を形成し,mpまで浸潤を認めたIIa+IIc型類似進行大腸癌(症例提供:岐阜市民病院消化器内科 名倉一夫).
読影は内視鏡,X線像ともに鶴田(久留米大学第2内科)が担当した.X線所見でS状結腸に,大きさ約15mm大の比較的背が低い隆起性病変を指摘した.その辺縁が外に向かって凸であること,表面が分葉結節であることから上皮性腫瘍と診断した.また,病変に向かうひだの集中とひだのつっぱりの所見から,smにmassiveに浸潤した癌と述べた.次に内視鏡所見で,病変の中央部に淡く発赤した陥凹が存在することからIIa+IIc型の大腸癌で,この陥凹の中に隆起成分が認められることから,深達度はsmにmassiveに浸潤した癌と診断した.田中(広島大学光学医療診療部)は,表面は通常のsm以深に浸潤した所見を呈しているのに,空気量により形が変わることから,粘膜下に粘液成分が多い癌であろうと発言した.また,会場から数人が,6年前に手術を受けた胃癌からの転移の可能性も指摘した.しかし鶴田は,腫瘍の形態からやはり原発性の癌と主張した.超音波内視鏡像も鶴田が読影し,粘膜下層を主体とした嚢胞形成と粘液塊の存在を指摘し,田中と同じ見解を示した.
切除標本と病理の説明は,山田(岐阜市民病院中央検査部)が行った.大きさ15mmのIIa+IIc型の大腸癌で,粘膜面は高分化腺癌であったがsmに粘液結節を伴いわずかにmpに浸潤した癌であった(Fig. 1).振り返りの議論で,清水(大阪鉄道病院消化器内科)は,内視鏡所見で数か所に粘液が粘膜面に露出した箇所を指摘した.出題者側から,検査時その箇所から実際,粘液の流失が認められたとの報告があり,皆の関心を呼んだ.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.