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はじめに
胃生検組織診断ではしばしば診断困難な例がある.診断困難な理由としては,①組織標本が小さく,粘膜下層は採取されても表層のごく一部であること,②採取された異型細胞の量が少ない場合,③挫滅や断片化などのアーチファクトを伴う場合,④細胞異型あるいは構造異型の乏しい癌が存在する,などが考えられる.そして,生検組織では当然のことながらその病変全体の一部しか見ていないので,その病変の最終的“診断”とは区別するため,生検診断では病変の一部分での“判定”としてGroup分類を用いてきた.しかし,病理学的診断の進歩に伴い,かなり正確な質的診断がなされるようになってきてGroup分類の必要性と意義が問われるようになってきた.そしてさらに,消化管の組織診断基準は欧米と日本で大きな差が認められていたが,近年その診断基準のコンセンサスを得るべきであるという気運が高まり,1998年にVienna会議が開かれVienna分類が作成された1).生検診断が欧米より進んでいる日本にとってはこのVienna分類は決して満足するような内容でなかったが,診断基準のコンセンサスがある程度得られたということには意義があると思われる.また,第75回胃癌学会で「胃生検Group分類の問題点」というパネルディスカッションも行われ,Group分類の問題点,運用方法の見直し,改正の是非,国際分類との関連などが討論された.これらを背景として日本の胃癌取扱い規約の改正作業に伴い,従来のGroup分類の改訂が提案されている.
「胃と腸」では過去に「座談会:胃生検のGroup分類をめぐって」(19巻10号,1984年),「主題:胃癌の病理組織診断基準の再検討は必要か」(29巻2号,1994年)でGroup分類に関する問題点が検討されている.ここでは,実際の生検組織を現行のGroup分類とVienna分類にそれぞれ従い診断していただいた結果を解析し,Group分類とVienna分類の長所と短所およびそれらの運用上の問題点を浮き彫りにすることを目的とした.
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