医道そぞろ歩き—医学史の視点から・36
学生の権利を守るために生まれたボローニャ大学
二宮 陸雄
1
1二宮内科
pp.782-783
発行日 1998年4月10日
Published Date 1998/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909338
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北イタリアのボローニャ大学の創立は1088年とされている.日本で『医心方』が書かれてから100年後にあたる.ボローニャでは,それ以前にも教区の民衆が法律を学ぶ権利が認められていたり,学生と教師の集合体も形成され,11世紀になって,商人を中心とする自治都市(コムーネ)ができて,商業活動のための法律の学習から始まったらしい.ボローニャには,やがてほかの都市や外国から学生が集まり,彼らは自分たちの権利を守るためにナチオ(同郷学生組合)を作り,これが集合して「統合体」(ウニヴェルシタス)を形成した.当時は一般には「ストゥディオ」と呼ばれ,これがのちの大学の起源となった.初めのころは,アルプス以南と以北の2つの学生組合があった.学頭(レクトル)を置いて自治的な法的形態をととのえ,学生は教師を自由に選んで,その教師と契約を交わして授業を受けた.
この学生の統合体とは別に,ほとんどがボローニャ市民である教師が集まって「コレギウム」を作ったのは,ドイツから来たフリードリッヒー世がイタリアを支配してからである.このコレギウムは自治都市が認定した学位授与組織といえよう.
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