ついである記・54
ボローニャ再訪
山室 隆夫
1
1京都大学
pp.212-213
発行日 2001年2月25日
Published Date 2001/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903213
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私の眼にはイタリアという国は何とも不思議な国に映る.人種的に色々なルーツを持つ人々が混然として生活しているばかりでなく,古いものと新しいもの,美しいものと醜いもの,勤勉と怠情,深い信仰と不信心,富と貧しさなどが社会生活の中で様々な形をとって混在しているからである.勿論,世界のどの国へ行ってもそのようなものの混在は多かれ少なかれ見られるわけだが,イタリーではそれ等の対比があまりにも大きく鮮明であるのでびっくりさせられる.例えば,古代ローマの遺跡であるカラカラ浴場で上演される現代オペラや超モダンなファッション・ショー,斬新なデザインのフェラーリやフィアットなどのイタリア車が走る石畳の道で物乞いをしている多くの路上生活者,献身的な勤勉さをもった修道女や医師によって支えられている近代的な医療と無数の麻薬中毒者やスリ,ひったくり.このような際立った新旧・明暗の矛盾が日常生活の中で普通に混在するのがイタリーの特長であるとも言えよう.
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