とびら
ひとこと言いたい
小島 泉
1
1国立療養所東名古屋病院附属リハビリテーション学院
pp.811
発行日 1985年12月15日
Published Date 1985/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103451
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第19回日本理学療法士学会での学会テーマは「理学療法“学”の確立」であった.このままの状態では近い将来本当に理学療法学なるものが確立されるのであろうか,と疑問に思われる今日このごろである.というのも学校サイドにしてもまた学生サイドにしても本当に長期的展望に立って物事を押し進めているとは思われないからである.
医学教育の本来の目的は学校で習得した知識・技術を基盤とし,患者から学んだことを将来体系づけ,その内容を再び患者に還元できる人材を育成することである.よって教育の成果は卒業後,5年,10年といった単位で考えることが必要である.学校教育のあり方でその是非が問われるのは,それまで学生であった人達が卒業後どれだけ社会に貢献できたか,またプロフェッショナルの集団の一員として組織にどれだけ寄与したかである.学校に入学し学業成績に不可はなく,何も問題を起こさず従順にして3年間の学生生活を送り,とにかく国家試験に受かりさえすれば良いというものではない.この過渡期において我々が求めているものは,不平も言わず,ただもくもくと働く管理のし易いだけの人材ではないはずである.学生に対しては一定の型にはまることを強要すべきではない.学生時代に芽生えた臨床なるものに対する信念,その方向性さえ誤っていなければそれを尊重し育ててやる姿勢が必要なのではないだろうか.
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