今月の主題 わかりやすいゲノム・再生医療の基礎・現状・展望
再生医療の展望
組織工学技術を用いた骨・軟骨の再生医療
上田 実
1
1名古屋大学大学院・医学研究科・頭頸部感覚器外科学講座
pp.494-499
発行日 2002年3月10日
Published Date 2002/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402908628
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人口の高齢化が進み,骨関節に障害を起こし日常生活に支障をきたす人の数は年々増加し,日本整形外科学会によればいまや人口の1%に達しようとしている.高齢者の歩行機能の障害は,最終的には体全体の生理機能を損なうことに直結しているので,なんとしても関節機能を回復させねばならない.関節に不可逆的な障害が生じると,これまでは人工関節が使用されてきた.わが国では現在,年間約5万個,費用総額約500億円の人工関節が設置され,根治療法の一つとして一定の地位を築いている.しかし長期間の使用によるゆるみ,感染,イオン溶出による全身反応など依然として未解決な問題を抱えている.したがって医療用具としての平均寿命は10年程度で,高齢者にとって手術のやり直しといった想像を絶する苦痛は避けて通れない.
この状況を解決する有力な方法が最近になって開発された.再生医療である.損傷を受けたり吸収したりした骨・軟骨組織を再生することができれば,関節疾患に苦しんでいる患者を通常の健康な生活スタイルに復帰させることが可能になる.
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