今月の主題 「考える」診断学—病歴と診察のEBM
考える診断学の実際
common symptoms and signs編
甲状腺機能異常を疑う徴候
小澤 安則
1
1虎の門病院内分泌代謝科
pp.1447-1451
発行日 2000年9月10日
Published Date 2000/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402907610
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なぜ正しい診断が重要か?
Basedow病甲状腺機能亢進症は,甲状腺腫,眼球突出症,頻脈というMerseburg3主徴が歴然としているような場合は簡単に気づくが(snapdiagnosis),むしろ眼球症状や甲状腺腫大が目立たない例が多い.また,ある臓器の症状が際だって前面に出ていた場合は,Basedow病であることが隠蔽され気づきにくくなることが指摘されている.正しい診断がなされないために,心房細動が続いたり,心不全に陥ったり,見当はずれな消化管の内視鏡検査などが繰り返されたり,精神疾患と間違えられたりすることが生ずる.またBasedow病を放置すると,ささいな検査,手術,感染などを契機に,thyroid stormをきたす危険がある.
一方甲状腺機能低下症は,潜在性から著しいものまで様々であるが,軽度の甲状腺機能低下症の場合でも,長く未治療のまま放置すると,動脈硬化症,血管障害のリスクを背負い込むことになる1).潜在性甲状腺機能低下症でも脂質異常をきたすし,動脈硬化の危険因子であることがRotterdam Studyでも明らかとなっている2).
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