今月の主題 粘膜免疫と臨床検査
巻頭言
粘膜の免疫防御機構
河合 忠
1
Tadashi KAWAI
1
1自治医科大学臨床病理学
pp.711-712
発行日 1993年7月15日
Published Date 1993/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901587
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ヒトの体の内部環境は外部環境から隔絶されているために,無数の微生物や異物の侵入から守られている.その両者を隔絶しているのは皮膚と粘膜である.皮膚は厚く何層もの扁平上皮細胞が密に並び,あらゆる異物の侵入を物理的に許さない.それに反して,粘膜は体の内部にあっても直接外界と接触しているが,組織としては軟らかく微生物や異物の侵入が容易である.そのために,粘膜には皮膚にはない特殊な防御機構が備わっている.すなわち,多量の粘液で表面が覆われており,粘膜組織には免疫細胞が浸潤している.
粘液は多量の多糖体を含んで粘着性に富み,あらゆる異物を直ちに捕捉する働きがある.最も異物の侵入が容易な呼吸器系粘膜細胞には繊毛があって,粘着された異物を物理的に外界に運び出す働きさえ備えている.粘液にはさまざまな非特異的液性因子が含まれていて,殺菌作用をもっており,粘膜組織から遊走した白血球,特に食細胞群が外界からの微生物や異物の侵入を防いでいる.今日では,粘液中に炎症に関連した多くの液性因子,例えばキニン,プロスタグランジンなどの存在が指摘されている.
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