けんさ—私の経験
胸部の救急と臨床検査
稲沢 正士
1
1前橋赤十字病院呼吸器科・アレルギー免疫科
pp.589
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906485
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救急当直をしていて困るのは,応急的な処置で済まない,本当の意味の救急患者である.世間では救急を1次救急,2次救急,3次救急などというが,誤解の多い言葉である.1次は急な処置を必ずしも必要としない疾患が多く,3次というのは,次の処置が出せるかどうかで予後に大きな差異が生じる真性の急性疾患に対する救急である.最初に患者を診た医師が,最も数の多い疾患だけに固執してしまうということはままある.さらに,急性疾患を疑ったとしても,証明なり否定なりをするにはある程度の検査を行わなければならず,他の職員やコメディカルの協調を必要とするであろう.無言のプレッシャーがあったり,ルーチン化されていない処置や検査を行おうとするときは,現場で大きな決心を要することが多い.
ある冬の夜に,日中からの飲酒で気分不良を訴えて来院した若い男性患者があった.自覚症状から左胸痛と思われる鈍痛があり,あまりリスクファクターはないものの,大至急心筋梗塞(AMI)を想定した補助検査を行ったが,強くそれを疑わせるような所見を欠いていた.しかし,この検査結果が出るまでに1時間程度を要し,その後,再度行った採血による検査結果からは,明らかに1回目の結果とは値の違うCRP,CPK,GOTなどの所見が現れ,心電図上の変化を認めPTCAをはじめ心筋梗塞に対する適切な処置が行われた.1回目の検査のときにはAMIの超急性期であったと思われる.
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