増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第6集
血液生化学検査
血液ガス・電解質・微量金属
Na/K/Cl(ナトリウム/カリウム/クロール)
矢内 充
1
1日本大学医学部臨床病理学
pp.408-411
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906398
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
健常人の血清浸透圧は,自由飲水の状態ではおおよそ285mOsm/kgに調節されている.Naは,細胞外液の主要陽イオンであり,これに随伴する陰イオンを合わせると,細胞外液の浸透圧を構成する溶質の95%以上を占める.
血清浸透圧(Posm)は,
Posm=2・[Na(mEq/l]+[BUN(mg/dl)]/2.8+[Glucose(mg/dl)]/18
なる関係がある.血清浸透圧は,ADH系と中枢神経内の渇中枢による口渇系の2つの制御系により,非常に狭い範囲で調節されているため,血清Naも非常に狭い範囲で調節されていることになる.細胞外液と細胞内液の浸透圧は,水が細胞膜を自由に通過するため常に等しく,細胞膜を介した浸透圧勾配は形成しない.一方,Naは細胞膜を介しての移動は自由にはならない.したがって,血清Na濃度は,体内のNa総量の動きを示すものではなく,あくまでも体液の浸透圧を反映し,主として水代謝系に異常を呈したときに血清Naも異常値をとる.すなわち,血清Na濃度の低下をみた際には,細胞外液量の優位の増加もしくは総Na量の優位の低下を考え,逆に血清Na濃度の増加の場合は,細胞外液量の優位の減少もしくは総Na量の優位の増加を考える.
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