増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第6集
血液生化学検査
蛋白
トランスフェリン
石橋 敏幸
1
,
丸山 幸夫
1
1福島県立医科大学第1内科
pp.208
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906311
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
トランスフェリンは主に肝臓で産生される分子量約80,000の糖蛋白質で,鉄と結合し生体内で鉄輸送蛋白として機能している.トランスフェリンは血漿中に通常200〜350mg/dl存在し,β1グロブリン分画に属する.1分子のトランスフェリンは2原子の三価鉄イオン(Fe3+)と結合し,1mgのトランスフェリンは約1.3μgの鉄と結合する.鉄を結合しているトランスフェリンと結合していないトランスフェリンを併せて単位容積当たりの鉄を結合する能力を血清鉄結合能(total iron binding capacity:TIBC)という.TIBC値は血液中のトランスフェリン量を表すと考えてよい.
トランスフェリン合成を調節しているのは肝細胞内鉄量と考えられている.肝細胞内鉄量が減るとトランスフェリン合成は増加し,肝細胞内鉄量が増加するとトランスフェリン合成は低下する.そのため,鉄欠乏状態や赤芽球造血が盛んになる病態ではトランスフェリンは高値を示す.反対に鉄過剰や鉄利用低下および鉄利用障害のときにはトランスフェリンは低値を示す.
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