増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第6集
血液検査
凝固/線溶系検査
アンチトロンビンⅢ/TAT(トロンビンーアンチトロンビンⅢ複合体)
中野 一司
1
,
丸山 征郎
1
1鹿児島大学医学部臨床検査医学講座
pp.160-161
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906287
- 有料閲覧
- 文献概要
異常値の出るメカニズムと臨床的意義
血管破壊や炎症などが原因となり,生体内で血液凝固反応が開始されると,凝固カスケード反応により,最終的に大量のトロンビンが生成される.トロンビンは,フィブリンの形成,血小板の凝集,平滑筋細胞の増殖などの様々な生体反応に関与し,血液凝固反応のみならず組織障害修復機構のキーエンザイムとして機能する.過剰のトロンビンは,容易に血管内血栓を生じさせる能力をもつため,役目を終えたら速やかに消滅させる必要がある.
生体内で過剰のトロンビンを不活性化する因子の一つとして,アンチトロンビンⅢ(AT Ⅲ)がある.アンチトロンピンⅢ(AT Ⅲ)は,肝臓で合成されるセリンプロテアーゼ・インヒビター(serpin)ファミリーの一員で,トロンビンのほか,第Xa因子,第IXa因子などの強力な阻害因子である.生体内で産生されたトロンビンは,アンチトロンビンⅢ(AT Ⅲ)により,ヘパリン存在下で速やかに不活性化され,トロンビン・AT Ⅲ複合体(TAT)を形成する.したがってTATを測定することは,生体内で産生されるトロンビンを間接的に測定することである.TATの血中半減期は15分以下ときわめて短いため,TATは血管内でのトロンビン生成の適切なマーカーとなる.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.