ロンドン外科学史瞥見・3
防腐法の創始者リスターの足跡を辿る
佐藤 裕
1
Hiroshi SATO
1
1誠心会井上病院外科
pp.947-951
発行日 2009年7月20日
Published Date 2009/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102627
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
最近の若い外科医達に「リスターはどういう人物か」と尋ねて,はたしてどれだけの者が「石炭酸(フェノール)を用いた防腐法を創始することによって外科学界に一大転換をもたらしたイギリスの外科医である」と答えられるであろうか.以前に筆者の母教室の教授と話をする機会があったが,「最新の外科学を講義することで手一杯で,重要だとは思うが外科学の歴史を教える時間がとれない」ということであった.今回紹介するリスター(Joseph Lister:1827~1912年:図1)が外科学の歴史をして「pre-Listerian」と「post-Listerian」という表現で区分せしめるほどの功績があった重要人物であるにもかかわらず,にである.言い方を変えると,フェノールを用いた防腐法が麻酔法の開発とともに外科学の進歩を押し進める大きな原動力となったにもかかわらず,にである.
そのようなわけで,2008年9月の筆者のロンドン行きの目的は,第1回(64巻5号)で述べたジョン・ハンターと今回のリスターの現地ロンドンでの顕彰状況の取材と関連資料の収集であった.そして,実際に現地に赴くと,やはりと言うべきか当然と言うべきか,防腐法の創始によって外科学に一大革新を起こしたリスターは,母国イギリスにおいてジョン・ハンターに勝るとも劣らずにきちんと顕彰されていた.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.