今月の主題 臨床医のための遺伝子工学
遺伝子工学のトピックス
ジーンタイトレーション
松川 直道
1,2
,
Oliver Smithies
2
1大阪大学医学部第4内科
2Department of Pathology, University of North Carolina
キーワード:
gene titlation
Keyword:
gene titlation
pp.2198-2201
発行日 1997年11月10日
Published Date 1997/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904823
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多くの疾患は,遺伝因子と環境因子が組み合わされて引き起こされる.線維性嚢胞症やDuchenne型筋ジストロフィーなど遺伝因子が単一な疾患もあるが,高血圧,動脈硬化,糖尿病に代表されるように,多くの場合は多因子疾患である.これら多因子疾患の原因遺伝子を決定するには,大きく2つの方法論が考えられる.
一つは疾患モデル動物やヒトの疾患家系において,広くゲノム全体をカバーするマイクロサテライトのような遺伝子マーカーとその表現型との相関をみるか,またあらかじめ候補となる原因遺伝子を定めRFLPを調べるようなanalytic experimentである.この場合,原因候補遺伝子が絞り込まれたとしても,そのlocusとリンクしている他の遺伝因子の影響も受けうるなど,その遺伝子と疾患との直接的な因果関係が証明できない欠点がある.これに対してもう一つの方法論として考えられるのが,特定の遺伝子のみを選択的に不活化することによりその遺伝子機能を調べるsynthetic experimentであり,1990年にSmithiesらのグループが最初に成功1)して以来,ジーンターゲティングとして現在では広く普及している.その利用法もnull変異を作るにとどまらず,遺伝子の置換,挿入など様々な変異を導入することが可能である.
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