カラーグラフ 感染症グローバリゼーション・3
目で見るマラリア対策(3)—マラリアの化学療法
金子 明
1
1東京女子医科大学国際環境・熱帯医学教室
pp.1193-1199
発行日 1997年6月10日
Published Date 1997/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904566
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マラリア化学療法心概念
化学療法はマラリア治療の根幹であるとともに,マラリア対策の要でもある.表1は,人類の主要感染症対策の成否の要因を比較したものである.天然痘は根絶が達成されているが,有効なワクチンがあることがその対策成功の鍵であった.また,感染者は全員発症し,ヒトからヒトにしか伝播が起こらないことが有利な要因であった.ただし,治療薬はなかった.それに対して,マラリアは現在までに実用的ワクチンは開発されておらず,浸淫地では多くのヒトが無症状の原虫保有者であり,さらに蚊が媒介する.これらは感染対策にとってすべて負の要因である.ただし,有効な治療薬があり,この点がいまだ達成されていないマラリア制圧の突破口であると筆者は考える.ちなみに,AIDSは伝播様式が限られていることが対策上重要と思われる.
図1の概念図に示すごとく,マラリア化学療法の効果は,人間,原虫,薬剤の3者間の相互作用により規定される.①原虫-薬剤 pharmacodynamics:それぞれの薬剤は原虫の生活環の特定のステージに効く.また種によっても効果が異なる.薬剤耐性が大きな問題である.②人間-原虫 immunity:原虫に対する免疫をある程度持っている(semi-immune)患者で薬剤はより効果がある.
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