増刊号 Common Disease 200の治療戦略
腎・尿路疾患
慢性腎不全
宇田 晋
1
,
秋澤 忠男
1
1昭和大学藤が丘病院内科(腎臓)
pp.487-490
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904171
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疾患概念と病態
腎不全とは糸球体濾過値(GFR)の低下に伴う排泄機能障害を基本とする広範な腎臓機能低下を意味し,さらに慢性腎不全とは急性腎不全とは異なり「年」もしくは「月」の時間的単位で経過し,かつ非可逆的な病態を指す.
図1に,慢性腎不全の自然経過の概略を模式的に示す.単一ネフロンあたりのGFRの低下に象徴される急性腎不全と異なり,慢性腎不全は「機能ネフロン数減少⇔残存ネフロンへの血行動態的過負荷(hyperfiltration;過濾過)」という悪性サイクルを形成することにより,緩徐ではあるが加速度的に腎機能低下は進行する.図1に示すように,クレアチニン(Cr)の逆数(1/Cr)を時間の経過とともにプロットすると,ほぼ直線上に描かれることが知られており(1/Cr直線),慢性腎不全進行の経過を把握する上で有用である.血清Cr値のみで腎機能を評価しようとすると,腎不全の経過を誤認し,ひいては腎不全とその合併症に対する治療開始時期を逸しかねない.一般的に,血清Cr値の正常値は1.3mg/dl前後を正常上限としている施設が多いが,図からもわかるように,Cr=2mg/dlでの残存腎機能はすでに約50%にまで低下しているという事実を忘れてはならない.
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