増刊号 Common Disease 200の治療戦略
神経・筋疾患
高血圧性脳症
丹羽 潔
1
,
北川 泰久
1
1東海大学大磯病院神経内科
pp.250-252
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904067
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疾患概念と病態
高血圧性脳症とは高血圧性緊急症の代表的疾患で,急激かつ著明な全身血圧(特に拡張期血圧)の上昇により,激しい頭痛,悪心,嘔吐,一過性視力障害,痙攣,意識障害などの脳症状を呈し,迅速かつ適切な降圧療法が行われないと致死的な転帰をとる疾患である.基礎疾患の有無は病態には関与しない.本疾患は血圧管理の普及した今日では極めて稀であり,一過性脳虚血発作,頭蓋内出血や脳幹部梗塞などの脳血管障害や尿毒症などとの鑑別が重要である.
脳血流には脳循環自動調節能(autoregulation)が働くことはよく知られている.調節可能範囲内での全身血圧変動は脳血流量に影響を与えない,しかし,この範囲を越える全身血圧上昇では,図1に示すとおり脳細動脈が拡張し,脳血流は必要以上に増加する(breakthrough of autoregulation1)).この結果,血液脳関門は破綻し,その結果,血管透過性が亢進し,ひいては脳浮腫を引き起こす.現在ではこの現象が高血圧性脳症の原因と考えられている.
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