増刊号 産婦人科医のための緊急対応サバイバルブック
Ⅲ. 産科編
❹妊産褥婦の合併疾患への対応法
高血圧/高血圧性脳症/脳卒中
笠井 絢子
1
,
青木 茂
1
1横浜市立大学附属市民総合医療センター総合周産期母子医療センター
キーワード:
妊娠高血圧症候群
,
痙攣発作
,
脳卒中
Keyword:
妊娠高血圧症候群
,
痙攣発作
,
脳卒中
pp.294-298
発行日 2024年4月20日
Published Date 2024/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409211243
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37歳,1妊0産.既往歴・合併症なし.身長155cm,非妊娠時体重54kg,BMI 22.4kg/m2.自然妊娠.妊娠初期から近医クリニックで妊婦健診を受けていた.妊娠初期の血圧は108/68mmHg,尿蛋白陰性であった.健診時の血圧は130/90mmHg程度で推移していた.妊娠39週6日に前期破水で入院.入院時血圧123/93mmHgと拡張期血圧は高値であったが,入院時尿蛋白は陰性だった.自然に陣痛が発来したが,入院6時間後に血圧179/113mmHgとなったため,ニカルジピン塩酸塩持続点滴を開始した.この間,頭痛などの自覚症状は認めなかった.入院7時間後,意識レベル低下,痙攣発作を認めたため,子癇発作を疑い,硫酸マグネシウム点滴を開始し,当院へ転院搬送を依頼した.その後,自然に意識レベルは改善したが,再度2回痙攣発作を認め,著明な高血圧201/137mmHg,および胎児徐脈80bpmを認めた.当院到着時,麻痺や瞳孔不同は認めなかったが,Glasgow Coma ScaleでE1V1M4と意識レベル低下を認め,不穏状態であった.血圧155/84mmHgで,胎児心拍は80bpmと徐脈を認めた.鎮静および気管挿管を行い,頭部単純CTで脳卒中がないことを確認したうえで,子癇発作疑い,胎児機能不全の診断で緊急帝王切開術を施行した.術後に意識レベルは改善したが,ICU入室とした.手術翌日の頭部単純MRIにて両側後頭葉,一部右前頭葉にfluid attenuated inversion recovery(FLAIR)画像で高信号,拡散強調画像で低信号領域を認め,子癇発作と診断した.
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